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タイトな流動性がGCC諸国通貨の切り上げを促す
GCC諸国での通貨切り上げの必要性は、インフレ率抑制の観点から論じられていますが、最近のタイトな流動性の観点から通貨切り上げが必要になるというレポートが発表されました。
2008/9/22 Emirates Business
- インフレ率の上昇よりむしろGCC諸国の銀行システムのタイトな流動性が、政策決定者に通貨政策変更を促し、今後12ヶ月での通貨切り上げをもたらすかもしれない、という新しいレポートが、カナダを本拠とするBCA Researcから発表された。
- レポートには、「多くの識者が、インフレ率上昇の観点から、GCC諸国の通貨切り上げの必要性を論じている。我々は、インフレが切り上げ圧力の大きな要因であることに同意する一方、問題はより複雑で、多面的であると考えている。今のところ、加速するインフレ率上昇にも関わらず、政策立案者は通貨政策を変えようとはしていない。これは、インフレ率自体は、通貨切り上げの十分条件ではないことを示している。」と書かれている。
- BCAは、サウジアラビアで現地通貨の預金が急激に減少していることが、クウェートを除くGCC地域で現在起きていることの典型であると述べている。「インフレ率は、現地の人が、現地通貨で預金しようというモチベーションを減らす。民間セクターの預金意欲は最近、減少しており、実質金利マイナスならば、このトレンドはしばらく続くだろう。短期預金のシェアが大きくなってきており、(長期)預金は、減少している。政府は、現地通貨で預金するわけではなく、主に外国通貨で預金をしている。さらに、過去数年間、公共セクターの借金は、プライベートセクターの資金需要を満たしていたが、既に公共セクターの資金ストックは少なくなっているので、この動きは続かないだろう。そうなると、民間セクターでのさらなる資金需要により、借入コストに上昇圧力がかかる。」と述べている。
- BCAは、「過去数年間のGCC銀行システムでの預金の増加は、主に外国人が現地通貨の切り上げを期待して、預金したものである。しかし、最近通貨切り上げ期待は、衰えており、海外資金の純流入額は減って、流出さえしているので、金利は上昇している。全体として、低い金利と、高くインフレ率は、現地通貨の国内預金を減らし、市場金利は上昇圧力をうける。」と述べている。
- GCCの政策当局は、固定通貨レートを引き続き維持し、長期金利は、高いインフレ率と現地通貨の預金インセンティブが低いことにより、上昇するだろう。一方、短期金利は、大きくは上昇しないだろう。国際投資家は、国内通貨金利と米国金利の間で、アービトラジーを行うからである。全体として、金利変動は大きくなり、イールドカーブの傾きは大きくなるだろう。
- GCC諸国の銀行システムは、いくつかの要因により不安定になる。銀行の負債の3分の1は、本来短期負債である。過去数年間で、海外からの借入シェアは、総資産の6%から11%に増加した。海外借入ポートフォリオの高まる変動性により、銀行システムへのストレスは増加する。インターバンク取引は大きく増加し、銀行の流動性が不足していることを示している。そうなると、銀行システムのストレスは、不動産マーケットにとってリスクになる。(引用終わり)
GCC諸国でインフレ率が高まる中、輸入物価の押し下げ効果となる通貨切り上げの必要性は、盛んに論じられてきました。(参照: 通貨切り上げ・ドルペッグ制離脱をアメリカ容認か?)
今回のレポートは、それとは違ってタイトな流動性が、通貨切り上げ圧力を高めると論じています。
最近の世界的な信用収縮の影響を、GCC諸国金融市場は受けています。(参照: UAE中央銀行 資金供給計画発表もインターバンク金利上昇)
海外あるいは、資本市場マーケットからの資金調達が難しくなってきており、頼みの綱は、国内の預金からの安価な資金調達です。しかし、実質金利がマイナスで、割安に据え置かれているため、自国通貨に預金する人は少なくなっています。
このような状況を解決するために、通貨切り上げを行い、自国通貨の価値を上昇させ、自国通貨預金の魅力を高めるとともに、海外投資家からの資金も呼び込もうという作戦です。資本市場での嵐が、今後収まるのか?それともこのような状態が長引くのかによって、今回の作戦が必要になるか変わってきます。
GCC諸国は、ドルペッグ制を採用しているため、最近のように金融市場が大きく変動する中、柔軟な金融政策を取ることができないというのは、実際、非常に不自由な面が大きいと思います。さらに、GCC諸国統一通貨の話が、同時に進行しているので、1国の判断で、政策変更を行うことはできず、さらなる足かせになっています。
中東金融市場は、昨年から今年の春ぐらいまでは、欧米での金融混乱とは無縁の存在でしたが(参照: ドバイ株・中東株は、世界的な金融不安と無関係なのか?)、最近は、影響をかなり受けるようになっています。GCC諸国統一通貨政策も、世界の金融市場の影響を大きく受ける状況になるのかもしれません。
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